不登校・ひきこもり  ~地域の支援を考える~

2013年2月19日 16時31分 | カテゴリー: 活動報告

KOPPIEの教室:右端が前田かおりさん

地域が支える若者の学びの場 フリースクール こぴえ “を訪ねて

 東京ネット子ども部会のメンバーと一緒に、狛江市でNPO教育ネットKOPPIEを訪ね、主催者の前田かおりさんにお話を伺いました。前田さんは、国立成育医療研究センターのこころの診療部思春期心理外来に勤務する心理士でもあります。

■ストレスが身体化して不登校ひきこもりへ

自分の感じているストレスを言語化や、感情化することが難しい10代の子どもの場合、発熱、頭痛、腹痛、吐き気、下痢などの症状がでて、不登校ひきこもりになることがあります。これは心理面のストレスが身体化してしまった状態。母親から離れて安心して出かけられる場、何かしたいことが見つかる場が必要だといいます。前田さん自身も小学校時代、不登校の経験者だそうです。

■昼夜逆転にもわけがある

子どもは教育を受ける権利をもっています。学校に行けないからといって、この権利がなくなるわけではありません。でも「義務教育」という言葉から学校は行くのが当たり前という意識が本人にも家族にもあるので、日中は精神的に辛くて、夜は安心して活動できる時間。そういう子どもたちに前田さんは、学校施設は嫌な時に無理して使わなくてもいい、自分が使えるようになってからでもいいよ、と伝えているそうです。

 フリースクールKoppieってどんなところ?

1980年に始めた放課後補習スペースを前身とし、1998年から民間任意団体「教育ネット KOPPIE」を母体に不登校やひきこもり高校中退などの子どもたちの居場所を提供しながら、生活・学習などのサポートを行っています。在籍者は現在、小学5年生から30歳。

カウンセラー・教員を含むスタッフの他、教育や心理を勉強中の学生や、不登校OB・OGの若者やその保護者、小児科医、精神科医をはじめとする医療関係者などがアドバイザーや支援スタッフとして活動を支えています。

またフリースクールの出席状況・活動報告書を毎月学校宛に提出すると、ほとんどの場合出席扱い。学校の授業・行事などへの参加のサポートや、連携・情報交換のための学校・教育機関への訪問も行っているそうです。 

ストレスの要因となっている人間関係や取り巻く環境との調整は、周囲の大人の努力が不可欠ですね。 

KOPPIEから“はじめの一歩”

   ― 生活のリズムをつくる ―

10:00~15:30  登下校時間なし。遅刻早退なし。タイムカードで「自己管理」。おしゃべり、ゲーム、パソコン、勉強…何をするかはスタッフと話し合って「自己決定」「自自己責任」

一人で過ごすことの多かった子どもはコミュニケーションが苦手で緊張しています。中にはみんなで食べる昼食が苦手な子もいるそうです。おしゃべりしながら、ご飯を噛んで飲み込むという当たり前と思える動作でも大変だというのです。       午後は市内の公園や体育館などを校庭代わりに、一人ではできないことをみんなで企画して楽しみます。

ひきこもる子どもが抱えている困難もいろいろです。人とのかかわりの中で、ゆっくりゆっくり本来のエネルギーを取り戻していく様子を伺い、いきなり学校に戻ることの難しさを知ることができました。一歩を踏み出すためには細やかにフォローできる人材と、人とのかかわりで元気になれる中間的な場が地域の中にやっぱり必要です。

 ■すべての学習は〈体験〉から

   ― 遊び・勉強・社会参加、そしてトラブルも ―

人と一緒にいると楽しいこともあれば、思い通りにならないこともあります。けんかなどトラブルはつきもの。自分の傷つきやすさ、傷つけやすさを知って人の気持ちを意識しながら会話をすることなど、子どもたちはここでの体験を通して“こころのエネルギー”を作っていくといいます。相手にとっても自分にとっても過ごしやすい大事な場所にしていくために、みんなで考え、解決に向けて行動していく様子を伺いました。トラブルを一つ一つ乗り越える経験が、将来に向けての“生きる力”になっていくと感じました。 

今の学校現場でもいじめに限らずトラブルは様々あります。それをなかなか乗り越えられない現状をどう捉えればいいのでしょうか。少なくともここに通う子どもたちにとっては、学校が辛い場所だったことは確かです。学校に通えない子どものために教育委員会が所管する適応指導教室がありますが、学校臭さがやっぱりダメという人もいるそうです。学校に足りないのもが、ここにはあるのです。

■ボランティアの“得意技登録”

   ― 地域の力を活用して ―

前田かおりさんが声をかけてひろがったという“教育ネットKOPPIE “では保護者や地域の人たちが子どもたちの体験活動を担っています。

月1回行われる山本多摩子さん主宰の「シナリオリーディングの会」もその一つ。怒りやつらさを言語化しにくい子どもは、感情を閉じ込めて自分を追いつめてしまいます。そんな子どもが普段言えない言葉でも、シナリオとしてせりふの力を借りて気持ちを表現することでSOSを出しやすくなっていくのだそうです。

■家族だけで抱え込まないで!        

毎月の保護者会と教育・心理相談も受けています。

手芸作家の山下ようこさん:原毛を使った作品は原画そっくり!!

また和泉多摩川商店街にあるコミュニティすぺーす“ホワイトパレット”では、ミニ講座や絵画教室、若者自立支援活動拠点にもなっています。幼かった頃の絵を手芸で仕上げていく山下ようこ先生の講座“子どもの絵刺しゅう”の作品は、どれも愛らしさでいっぱいです。親が子どもへの愛情を再確認するとてもいい機会になるに違いありません。ここでは親の会が運営にかかわり、孤立を防ぐためにおしゃべり会も行っていました。

指人形になった!!子どもの絵ひとつひとつが宝物・・・

 
 
 
 
 
 
                  
子どもの絵刺しゅう:手をつないでいるだけで幸せだったよね❤
 

稲城の不登校児童・生徒数は増える傾向にあります。しかし残念ながらKOPPIEのようなフリースクールも家族の支えあう場もありません。子どもは人とのかかわりの中で成長する場が必要です。今、毎日をどう過ごしているのでしょうか。

■教育を受ける権利を保障する

― フリースクールの存在の意味を考えると… ―

子どもの感受性や成長に個人差があって当たり前。自立に向けて「生きる力」を育むことは本来学校の役割です。しかし社会の問題を映し出す様な課題を抱えた子どもが増える中、個々への対応が十分とは言えません。また競争教育を進める受験システムの中にあって、効率重視に傾いた学校制度の枠組みに押し込めようとしても、型に合わない子どもがいて当然です。フリースクールは様々な原因でストレスを感じ、学校に通えない子どもが望めば学ぶ権利を保障しているといえます。

地域の学校に通えば、無償で教育を受けることができますが、不登校の子どもたちが通うフリースクールは保護者の利用料で運営されています。子どもの貧困が問題となっている今、経済的に厳しい家庭の子どもも増えてきています。    

ホワイトパレット:親の会も運営に参加するコミュニティすぺーす

将来的に引きこもってしまう若者の社会経済的損失を考慮すれば、フリースクールが果たす役割は大変大きいものです。不登校や引きこもりの子どもたちが増えている以上、安心して一歩を踏み出せる場として、行政がしっかりと支えていく姿勢を示すべきだと考えます。学校という枠組みの外にいる子どもたちの教育を受ける権利を保障するために。